音楽と言葉の体感

とあるお仕事の為、一気に文学作品を読んでいる(日々上げているのは趣味の本とか)。活字に触れられるしあわせ。私はたぶん、いわゆる活字中毒というやつなので、音楽活動の妨げになってはいけないと、歌の仕事をさせていただくようになってからは意図的に読書を避けていた。謎の禁欲精神と看做されるかもしれないけれど、そうしないといけないと思うほどに私は不器用だった。誤解を恐れずに言えば、自らの適性を顧みて、音よりも弁が立ってしまう状況を避けたかった。

でも2021年に加藤咲希名義のジャズボーカルアルバムと、2023年にLilla Flicka名義のSSWとしてのポップアルバムをリリースして、音楽家として自分が良いと思える双生児作品を世に出せたこと、さらにその直後に父の他界とそれにまつわる精神的な疲弊と膨大な事務手続きを経験した後、もう好きなだけ、本を読んだり、文章を書いたりすることを自分に許すことにした。

あらためて言葉の世界に戻ってきてみると、全ての人が同じとは限らないので私にとってはと限定した上で、音楽の方が物理的にも精神的にも圧倒的に健康な世界である。

例えば安定した歌を歌い続ける為には日々のストレッチ、筋トレ、ボイトレが必要がなので、必然的にエクササイズをしなければならないし、耳であるいは全身で音を聴いて、声を使って音を発する、この振動がマッサージさながら、周波数を使って自分で自分を治療するような行為となる。

一方本を読むときは同じ姿勢が長時間続く。執筆時も同様で、振動してはむしろ本が読めないし書けない。こちらの揺らすのではなく、留めるという作業は人体にとってかなり過酷であり、別の意味でものすごい体力を必要とする。だからあの有名な某作家先生は毎日走っているに違いない。

さらにライブ活動というのはそれだけで必然的に人との交流が生まれるけれど、読んだり書いたりする作業は、それを何らかの形で発表するまではたったひとりの脳内で描かれる孤独な作業である。もちろん文字を通した先人著者たちとの交流はあるけれど、それはライブと比べるとかなり密やかな交歓だ。こちらもほとんど体が動かない。簡単に自家中毒になれる。言葉の世界はその成り立ちからしても、端的に言って、狂気の世界なのである。

今考えると、私は音楽というアンカーが存在してくれるようになったからこそ、やっと言葉の深海に躊躇なく潜っていくことができるようになったのかもしれない。もちろん拙いながらも夢中で歌手としての活動を拡張しているときにはそんなことは全く考えていなかったので、これは意図せずして得た結果である。全ての活動中の作家は何らかの形でアンカーを持っているのだと思うし、音楽家、特に脳内で書いて描いていくタイプの音楽家にとっても(つまりそれはこの文脈において作家と同義である)、何らかのアンカーを持つことは活動を続けていく為に、何よりも優先すべき最重要事項であるように思う。

【💫出演予定💫】

6/4(火)関内Venus 

6/7(金)おむすびJAZZ神楽坂💖初出演

7/2(火)関内Venus 

7/25(木)関内Venus

8/6(火)関内Ben Tenuto

9/14(土)代々木NARU 💖初出演

※3年ぶりに英語個人レッスンの受付を再開しました!日常会話、ビジネス英語、受験、全て対応可。まずは体験レッスン¥3,000/1hからお気軽にどうぞ👩‍🏫📕

臆病なフィリフヨンカのこと

風速11メートル、嵐の中を帰ってくる。嵐のときに思い出すのはフィリフヨンカのこと。

フィリフヨンカはスウェーデン語で書かれたトーベ・ヤンソン作のムーミンシリーズに出てくる女性のキャラクターだ。彼女は神経質で、繊細で、人付き合いが苦手で、いつもびくびく何かを気にして怯えている。家のインテリアのバランスはこれでよいのか、椅子の位置ひとつをとってみても、ちょっとした埃も、物音も、何もかもが彼女を悩ませ憂鬱な気持ちにさせる。でもある日、大嵐がやってきて、一晩にして全てが壊れ、飛ばされてしまい、そのとき生まれて初めて彼女は心の平穏を得る。そんな話だった。

ムーミンはアニメ化されたことで日本でもとても人気になった。アニメも素敵だけど、原作の小説は私が思うに対象年齢は幅広く子供から大人までで、かなり深くて際どいことも題材にしている。特に孤独について。登場人物たちは、孤独を嫌ったり、抱きしめたり、愛したり、上手く付き合っていたりする。

誰でも、たったひとりで世界と対峙していて、そのやり方は人それぞれだけど、でも皆がたったひとり、という共通点によって、常にたったひとりの仲間たちが、あらゆる場所に遍在しているということになる。

写真は去年ストックホルムで撮ったもの🇸🇪

【💫出演予定💫】
6/4(火)関内Venus
6/7(金)おむすびJAZZ神楽坂💖初出演
7/2(火)関内Venus
7/25(木)関内Venus
8/6(火)関内Ben Tenuto
9/14(土)代々木NARU 💖初出演

※3年ぶりに英語個人レッスンの受付を再開しました!日常会話、ビジネス英語、受験、全て対応可。まずは体験レッスン¥3,000/1hからお気軽にどうぞ👩‍🏫📕

恋愛アナーキスト

ずっと読みたかった川上未映子のエッセイシリーズ第一弾『発光地帯』を入手。

好きでよく読んでいる「雨あがりの少女」のブログの中でこの本の中にある文章が引用されていて、前から気になっていた。
https://note.com/ameagari/n/naec0aa0dade6

このひとは恋愛アナーキストで素敵だなあと思う。これまた大好きで少女時代から私の血肉となっている作家、江國香織は、恋愛は嗜好品だと書いていたけれど、コーヒーや、紅茶や、煙草や、アルコールや、美味しい食事や、絵や、物語や、音楽に、一生を捧げて生きて死んでゆく者もいる。もしかしたらいつか私も恋愛のあれこれを卒業する日が来るのかもしれないけれど、まずはやりきらないと卒業することもできない。どんなに聡明なひとが諭してくれてもなしのつぶてで、私は恋愛と音楽と言葉のアナーキズムに突っ込んでゆく。そうやって、感じ切って、歌い切って、描き切ることをやらないと、この人生はままならないと思っているのだった。

「二十代の初めごろ、すごく好きでちょっとのあいだであってもどうしても離れられなかった人に、独りきりでいることに耐えられないふたりなら、一緒にいつづけることなんてできないんだと何度も何度も言われたけれど、そのときはそうかもしれないと苦しみながら思ったけれど、あれはほんとうのことだったのだろうか? (中略)大事な人とは離れてはいけないのではなかったか。そうでなくてもわたしたち、いつか必ず離れてしまうときはやってくるのだったからたったいま大事に思うのならあれこれあぐねて離れてしまうことはない、世界なんかわたしとあなたでやめればいい、そしてもう一度、わたしとあなたでつくればいい。」
川上未映子『発光地帯』(P31-32中公文庫2014)

【💫出演予定💫】
6/4(火)関内Venus
6/7(金)おむすびJAZZ神楽坂💖初出演
7/2(火)関内Venus
7/25(木)関内Venus
8/6(火)関内Ben Tenuto
9/14(土)代々木NARU 💖初出演

※3年ぶりに英語個人レッスンの受付を再開しました!日常会話、ビジネス英語、受験、全て対応可。まずは体験レッスン¥3,000/1hからお気軽にどうぞ👩‍🏫📕

NOKKOの人魚が素敵すぎる

6/7(金)に初出演のおむすびJAZZ神楽坂。せっかくの機会なので日本語の曲も何曲か歌ってみようかなと選曲中。

NOKKOの『人魚』が良い曲すぎて手が(そして耳が)止まる。朧げながら当時の子供心にも印象的だった。あらためて、言葉も音も、なんて美しい曲なんでしょう。聴いていると泣けて泣けて仕方ない。カフェでひとり泣く変な人です。この曲の中には誰かを好きになったときの切ない気持ちが抽象的なままたくさん詰まっていて、いちどでも大切な誰かを失ったり、失恋したことのある人ならわかるはず(つまりほぼ全人類)。

作曲筒美京平、作詞NOKKO、アレンジがテイ・トウワ!煌めく才能が全てのセクションで発揮された奇跡。

【💫出演予定💫】
6/4(火)関内Venus
6/7(金)おむすびJAZZ神楽坂💖初出演
7/2(火)関内Venus
7/25(木)関内Venus
8/6(火)関内Ben Tenuto
9/14(土)代々木NARU 💖初出演

※3年ぶりに英語個人レッスンの受付を再開しました!日常会話、ビジネス英語、受験、全て対応可。まずは体験レッスン¥3,000/1hからお気軽にどうぞ👩‍🏫📕

アンパンマンミュージアムへ

本日、姪っ子ちゃんに会う為にアンパンマンミュージアムへ。

可愛すぎる姪っ子ちゃん会いたさゆえ、普段できない早起きができる…人間って勝手だわ。

たまーにおばちゃんちに泊まりに来てくれるような子に育ってほしい!

アンパンマンの顔のパンは長蛇の列であきらめ…

エネルギーをチャージさせてもらい、また日々の音楽活動とレッスンに精を出します✨

【💫出演予定💫】
◆6/4(火)関内Venus
寺屋ナオ(Gt)
◆6/7(金)おむすびJAZZ神楽坂💖初出演
古川琴子(Pf&Vo), Sasammy(Vo&Tb)
◆7/2(火)関内Venus
コーラスグループVenus Sistersでの出演、裕美ママBdayイヴ✨
◆ 7/25(木)関内Venus
水野樹里(Vln), 大橋祐子(Pf)
◆ 8/6(火)関内Ben Tenuto
The Lost Sweets企画Blossom Dearie特集🌷
浅川太平(Pf)
◆ 9/14(土)代々木NARU 💖初出演
文舒, 片貝晴美(Vo), 廣田ゆり(Pf) 佐藤きりん(Ba)

※英語個人レッスンの受付を再開しました※
日常会話、ビジネス英語、受験、全て対応可。まずは体験レッスン¥3,000/1hからお気軽にどうぞ👩‍🏫📕

ブログ移行とPisces Sisters復活ライブのお知らせ

こんばんは🌟

実は最近、こちらでこっそりブログを書いています。あられもない、あんなことやこんなこと!を書いてますよー。

https://note.com/sakikato/all

そして!

特別ライブのお知らせです💙

Special Jazz Live Show

4/3(月)コントレイル渋谷
At Contrail Shibuya on 3rd April

復活!パイシス・シスターズ/Pisces Sisters Reunion🐠

https://contrail-shibuya.com
渋谷区道玄坂1-15-7 セントラル道玄坂1階
03-6433-7991

Claire Natirbov (Vo.)
加藤咲希/Saki Kato (Vo.)
浅川太平/Taihei Asakawa (Key.)

Open 6:00pm
1st 7:00
2nd 8:15
Charge ¥1,000 + TIP

カリフォルニア/N.Y.出身のアメリカンガール、Claireとのボーカルデュオ、パイシス・シスターズの復活ライブです✨

昨日リハでした♫スタジオ出た後にぱちり。

The Andrew Sistersのヒットナンバーとして有名なBei Mir Bist Du Schön、Rum and Coca-Cola。

そしてMoon River、Girl from Ipanema等の珠玉の名曲は浅川太平さんのオリジナルデュオアレンジで歌います♊️

Claireが好きな日本語の歌詞がついている曲ということで、ザ・ピーナッツの『可愛い花/Petite Fleur』、荒井由美の『ひこうき雲』もセットリストに加えました🌸

ぜひご予約の上、お越し下さいませ✨

Abbey Lincoln ”The World Is Falling Down”訳詞とか

卓越した技巧と文学的な背景や引用に溢れた作詞家の仕事は素晴らしい。たとえいくらLorenz Hartの人生が抑鬱、依存症、自身の外見やセクシャリティに関する苦難に満ちていようとも、彼には技術と知識があった。こちらアジアの極東でも2月になるとあらゆる商業施設でこぞってかけ出す”My Funny Valentine“や、Woody Allenの映画でお馴染み”Manhattan”も、私が世界でいちばん親和性を感じるジャズスタンダード曲も、彼の作品だ。

でも、シンガーソングライターという生き物が作った、技術的にはほとんど洗練されていない、ただ言いたいことがあって、それが曲になってしまった、というタイプの曲も、ほんとうに魅力的。たとえば、Abbey Lincolnの ”The World Is Falling Down”。

私はこの曲の背景を何も知らない。私程度の検索能力では調べても情報に辿り着けなかった。でもその歌唱と歌詞と演奏と楽曲そのものが、雄弁に自身のことを語っている。たぶん、この曲の訳詞はインターネット上には上がっていない。私の中には相変わらず、何か美しいものに触れたときに、それを英語と日本語という二つの言語で表したいという欲求があるので、誰に頼まれるでもなく、いや、おそらく自分自身の為に、この歌詞を訳してみる。

これは葬送曲だ。人を弔うときに、歌ったり、楽器を奏でたり、踊ったりする、という文化が世界には存在する。ニューオリンズにも、その文化的遺伝子は引き継がれた。

優れた音楽家は言う、言語は音楽を凌駕するのだと。私は思う、音楽は、言語を凌駕するのだと。でもこの楽曲はこの議論をその魅力によって一瞬で終わらせることができる。歌は言語であり、同時に音楽なのだ。


“The World Is Falling Down”
 By Abbey Lincoln

There are some folks
I used to know
Who used to smile
And say hello
And spin the world
And turn the page
Entertaining from the stage
かつて私が知っていた人々
笑顔で声を掛けあった
私たちは世界を動かして
ページをめくった
私たちはステージ上の
エンターテイナー

Father Time
Forever true
Loves its own
And me and you
Disappear just like the sun
When the day is done
時の神様は
自身の永遠性を愛する
そして私と貴方は
ただ消える
その日の仕事を終えた
太陽みたいに

The world is falling down
Hold my hand
It’s a lonely sound
Hold my hand
世界が落ちていく
手を繋いで
それは孤独の音楽
手を繋いで

We’ll follow the breeze
And go like the wind
And look for a place
Where the willows end
私たちはそよ風を辿り
風のように去る
探しているのは
柳がこうべを垂れる場所

The world is falling down
Hold my hand, hold my hand
Hold my hand, hold my hand
世界が落ちていく
手を繋いで、手を繋いで
手を繋いで、手を繋いで

Summer’s gone
And winter’s here
We had a lot of rain last year
The news is really very sad
The time is late
The fruit is bad
夏は行き
冬が来た
去年はたくさん雨が降った
ほんとうにかなしいニュースばかり
時は遅く
果実は腐っている

The morning’s come
And roosters crow
And people have no place to go
And disappear
Just like the sun
When the day is done
朝が来て
雄鶏が鳴く
人々には行くあてがない
そして消える
その日の仕事を終えた
太陽みたいに

The world is falling down
Hold my hand
It’s a lonely sound
Hold my hand
世界が落ちていく
手を繋いで
これは孤独の音楽
手を繋いで

We’ll follow the sound
And live for today
And look for a place
Where the children play
私たちは音を辿って
今日の為に生きる
探しているのは
子供たちが戯れる場所

The world is falling down
Hold my hand, hold my hand
Hold my hand, hold my hand
世界が落ちていく
手を繋いで、手を繋いで
手を繋いで、手を繋いで


ここで “The World Is Falling Down” の訳詞は終わり。

この曲を含んだ美しくスウィンギーな楽曲たちを以下のライブで歌いたいと思います。

2023年
2/21(火)関内Venus

https://www.venus-hk-j.com
横浜市中区太田町2-27ザ・バレル飛高ビル4F
045-228-8559


【出演】
加藤咲希(Vo.)
浅川太平(Pf.)

1st 19:40, 2nd 21:00, 3rd 22:20


私はこの文章をなぜかKeith JarrettのThe Köln Concertを聴きながら書いたりしている。
次はやっぱりAbbey Lincolnを聴こうっと。

訳したのはこの曲ね。
https://youtu.be/UpzuSUVfXJI

横浜ジャズ界、橋本宏之先生のこと

橋本宏之先生が亡くなった。めちゃくちゃかっこいいピアニストさんだった。関内Speak Lowのハウスピアニストを何十年も!勤めあげられた方だった。

私がジャズに魅せられたのはWoody Allenと菊地成孔師匠がきっかけだったけれど、実際に歌い始めたのは関内Speak Lowで、大学4年生のときにアルバイトで入ったことがきっかけだった。今でも覚えている、どきどきしながら電話をかけた。れい子ママがあの独特のまったりした声で、いちおうねー、履歴書持ってきて。写真なんていいからさ、とりあえずまずおいでよ。電話をかけたとき以上に面接では緊張していた。何を着て行ったかまで鮮明に覚えている。当時まだ野口美佳がCEOだったランジェリー通販のピーチジョン、洋服も売っていたのだ。モスグリーンの、胸と背中ががばりと大きく開いたワンピースに当時のはち切れそうな体を押し込んで行った。「ジャズバー」の面接には自分の手持ちの中でも最大限に大人びた服を着て行くべきだと思ったのだ。大学4年生の最大限の背伸びだった。

面接官のれい子ママを待っている間に初老の紳士がすっと店内に入って来て、おもむろにピアノを奏で始めた。面接は1stセットの間に行われ、たったの1分ぐらいだったように思う。ふーん、大学生なの。まあ、じゃあ空いているところ入ってみて。ピアノの音がずっと流れている。私の注目がピアノにあることに気づいたれい子ママが、今日は好きなだけ聴いて行っていいよ、と言ってくれた。それが、私が初めて生の現場で聴いたジャズだ。それは、セクシーで、遊び心に満ちて、どこかもの哀しく、無骨でもあり、でもやっぱりキラキラした音楽だった。ここでバイトするんだ、こんなに素敵なピアニストさんが弾いている場所で。私はワクワクした。それから10年ほども橋本先生のピアノを聴き続け、橋本先生の伴奏で歌わせていただき、Speak Lowにお世話になるとは全く思いもよらなかった。というかジャズ歌手の末席に名を連ねることになるとは思いもよらなかった。何もかもが夢のよう。

当時私はすでにLilla Flickaというポップバンドを主宰して歌っていたけれど、ジャズは憧れの音楽で歌ってはいなかった。歌えるとも思っていなかった。でもアルバイトを続けて数ヶ月たった頃だろうか、橋本先生が言った。咲希ちゃん、何か歌ってみればいいじゃない。私が面接で言った、ポップバンドをやっているということを、橋本先生は耳にしていたのだ。誰も覚えていなかったのに。橋本先生は誰よりも記憶力がよかった。でも私はジャズは何も歌えないです。いいから、何でも伴奏するから、まずは歌ってみなさい。そうやって私はカウンター業をやりながらジャズを歌い始めた。気がついたらいつの間にかレパートリーが増え、Speak Lowに出入りするミュージシャンの方々やお客様との繋がりが自然とできていった。

私をソロのジャズ歌手としてデビューさせてくれたのも橋本先生。関内にあったJazzmen Clubでのライブに歌手として呼んで下さった。共演は息子氏、素晴らしいベーシストの鈴木健市さん。橋本先生は毎日Speak Lowでの演奏があるので、Speak Lowの演奏の合間の掛け持ちライブだった。エネルギッシュだった。私が歌手活動に専念する為に長年お世話になったSpeak Lowのバイトを辞めるときに、橋本先生がおっしゃった。いろんなたくさんの人と共演して、勉強して、大きくなってね。その後、歌手としてSpeak lowに戻り、出演させていただくようになった。

コロナ前だから、確かあれは2020年頃、セットの合間に初めて橋本先生がひとこと言ってくれた、なかなかカッコよくなって来たんじゃないの。2021年にジャズ歌手としてアルバムデビューしたときにはJAZZ JAPANの特集記事を目を細めて読んでくれた。これからだねえ。橋本先生が言った。橋本先生、私は全然まだまだです。

Speak Lowでアルバイトしていた頃、夜遅くなると、よく橋本先生が車で送ってくれた。車内ではいつもビバップが、チャーリー・パーカーがかかっていた。先生いつもビバップなんですね。飽きないねえ、馬鹿の一つ覚えで。橋本先生は、お茶目で、ひょうきんで、聡明で、お洒落で、たくさんの本を読んで、音楽を聴いて、実は最近の音楽にもかなり詳しかった。子供の頃は美空ひばりとよく遊んだとか、十代のときから親に内緒でピアニストをやってたこととか、米軍基地内での話、ハンク・ジョーンズと友達だったこととか(ホテルで演奏していたらちょうど宿泊していて仲良くなったとか)、モテモテだったこととか(先生は一切口説かない、女性が勝手に付いて来ちゃうタイプ)、とっても優しかったこと、新人にもベテランにも全く分け隔てなかったこと。

実はこっそり、橋本先生にいつかインタヴューして、日本ジャズ界の生き証人の話を伝記にしたいと思っていた。それは叶わなかったけど。でも、橋本先生が教えてくれたキラキラの活劇と、キラキラの魔法使いのピアノは、私の中に、周りの人間に、残っています。橋本先生、おつかれさまでした。ありがとうございました。

Speak Lowは業界用語で言ういわゆる夜店である。一説によるとジャズは売春宿で始まった音楽だ。売春宿で奏でられていたジャズも、日本の大学のジャズ科で習ったジャズも、NYに留学して勉強して来たジャズも、ジャズはジャズで、聴こえてくることが全てで、よい演奏、よい歌であれば、出自は全く関係ない。私は夜店出身のジャズ歌手だ。そして出自とは関係なく歌がまだまだなので、死ぬまでにはよい歌が歌えるようになりたいです。

橋本先生のfacebookのプロフィールにはこう書いてある。

「ジャズが好きでピアノを弾いております」

先生、天国でも絶対ピアノ弾いてるな。

夏至祭ジェットセッター

お友達のリッラフリッカさんの里帰りに同行して、スウェーデンのストックホルムに行ってました。ストックホルムへの直行便はないのでターキッシュ・エアラインズでイスタンブール乗り換え。

ストックホルムでは夏至祭に参加してきました。しばらく会えていなかったお友達たちに片っ端から会ってきました。そして急遽、リッラフリッカさんのご家族の夏のバケーションに私も連れていってもらうことになり、なぜだかまたトルコの今度はアンタルヤへ!アンタルヤは北ヨーロッパ在住の方々には人気のビーチリゾートです。

東京→イスタンブール→ストックホルム→アンタルヤ→ストックホルム→イスタンブール→東京

という旅でした。短期間でかなりの距離を移動しました。飛行機の揺れは揺籠のよう。どこでもほんとうによくしていただきました。あらためて自分はどこでもやっていけるなあと思いました。住めば都です。

私はこれからしばらくまた歌を歌わせていただきます。7/13(水)の赤坂ベレラが復帰ライブ第1弾です。ご予約くださったお客様先着10名様に、ささやかですがストックホルムのお土産を差し上げたいと思います。10ヶ月ぶりの東京でのライブ、皆さんにお目にかかれることをとても楽しみにしております。

星を読むひと

最初に、私には、政治のことはよくわからないです(勉強不足でごめんなさい)。でも今回の、自民党総裁が岸田さんになってゆく流れをマドモアゼル愛先生のYouTubeで毎日追っていて、1ヶ月前から愛先生が言い続けていたことが、ばんばん的中していく中で、今日に至って、先生の才気に、あらためて鳥肌が立ちました。

「私は、本当にそうなのかな、大丈夫なのかな、とは思うのだけれど、星の上でそうなのでね。そして、いつも私より星の方が正しいので」

占星術家というのは、なんて、なんて、尊いご職業なのでしょうか。時代や国が違ったら、国家君主や王族に仕えるようなお立場であったことでしょう。ご本人はそれを望まないかもしれませんが。今でもそういった依頼はあえて断って、あくまでも市井の人々の為に、星を読んでいらっしゃるのかもしれません。

国家や大企業が大きな決定をする際や催事の日程を決める際には、占星術師が一定の役割を担っていることは知られた話です。インドでは占星術は国家機関で研究されています。医療占星術という分野もあります。明治時代の話でしたでしょうか、イギリスの王族の方が、日本の天皇陛下のお付きの占星術師はどちらの方ですか?と尋ねられて、誰も何も答えられなかったというエピソードを耳にしたことがあります。占星術は、統計学の要素を多く含んでいます。こういう星の配置になったら、こういうことが起こる、ということを読んでいきます。こういう星の配置の時期に生まれた人には、こういう星の配置の時分に、こういったことが起こる傾向がある、といった具合に。

人は、星どころか、地球という一惑星の、自分が居住する一部の地域が曇天になっただけで、頭が痛くなったり、眩暈がしたりします。女性の生理周期は月の満ち欠けと連動していたりします。満月の日の事故率は高いそうです。そんな私たちが、さらに何百倍、いえ、何千倍、何万倍も大きな天体の動きに、影響を受けない、と思うことのほうが、傲慢で、私にはとても信じられない。そして、傲慢な方々は一様にして、幸せそうには見えません。ということは、私が幸せを感じられなくなっているときは、きっと、傲慢になっているのですね。失礼、話が逸れました。

私は、科学も占星術も、人間の知的営みの産物として、どちらの恩恵も受けていますし、どちらも素晴らしいと思っています。両方とも非常に論理的な作業で、かつ、緻密に積み上げられた論理的作業ののち、本当の最後の最後の最後には直感がものを言う行為であると考えます。違いは、科学には因果関係の証明が必要だけれど、占星術に因果関係はあっても証明をする必要はない、ということでしょうか。占星術で、なぜそうなるか、ということは扱わない。ただ、こういう星の配置のときに、こういうことが起こる、という事象のみを扱います。(もし違いましたら詳しい方ご指摘いただけましたら嬉しいです)

とても残念なことに、現代の日本では、そして近代文明においては、占星術は、下手したら、インチキのような、扱いを受けることもあるようです。インドには国立の研究機関があると前述しましたが、日本にお生まれの占星術家は、民間人としてのあり方の中で、自身の直感のみによって占星術を選び取り、先人から学び、天才から天才への引き継ぎが行われる中で、茨の道を歩まれてきたのでは、と勝手に想像してしまいます。ジャズを含めたポップミュージックが辿ってきた道も似ているかもしれません。(今ではジャズは大学でお勉強する学問にもなりましたが)

星を読む、というのは究めて知的な作業です。大学受験どころではない、信じられないような膨大な量の知識を暗記し、計算し、解釈する。政治、経済、歴史、時事問題にも明るくないといけないでしょう。暗記力、計算力、洞察力、解釈力、そして私利私欲に惑わされないこと。そうでないと、読みがずれてしまうからです。頭は冷静に、心を持って読むこと。なんて尊い職業なのでしょうか。

マドモアゼル愛先生という、太陽が水瓶座にあり、天賦のひらめきを持って生まれた西洋占星術家の、自民党総裁選の行末を鮮やかに言い当てなすった手腕にただただ感激して(素晴らしい映画を一本見終えたような、とても爽快な気分です)思わず書きなぐってしまいました。

以上、太陽が魚座、月が山羊座の(われながらまさに、な文章と人生)一介のファンより、ラヴレターでした。

愛先生、お見事!

(ちなみに、愛先生は、お名前は可愛らしいですけれど、71歳の男性で、日本占星術界の大家であられます)